老化とは

 老化に伴って体の機能が衰え、やがて寝たきりやボケになって介護を必要とするようになるのではないかというのが現代人の不安であると同時に、それを予防することが高齢社会を迎えた国の課題でもあります。

 これは医学的には、サルコペニア(筋肉減弱症)とオステオペニア(骨減弱症)といい、具体的には老化に伴って細胞のたんぱく質合成能力が減少し、筋肉や骨が弱くなってしまうことです。

 子どもはたんぱく質を作る力が旺盛なので、特別に運動などしなくても元気いっぱいで、「寝る子は育つ」といわれるのは、寝ているうちにたんぱく質が合成されるからです。

 ところが、四十歳を過ぎた頃から急激にたんぱく質を作る力が弱くなり、筋肉が減って体つきがたるんでくるだけでなく、脂肪やブドウ糖を燃やす能力がダウンするため、肥満や高脂血症、動脈硬化、糖尿病などに悩むことになります。

 これを防ぐには、全身の細胞を刺激してたんぱく質の合成能力を取り戻すことが重要です。

 植物は水と炭酸ガスからブドウ糖を作り、でんぷんから脂質やたんぱく質を作っているように、私たちの体も、でんぷんからたんぱく質を合成する能力を持っています。唯一合成できないのが必須アミノ酸、必須脂肪酸とカルシウムや鉄などのミネラル、それにビタミンのいくつかで、これらは食事から摂らなくてはいけませんが、それ以外はすべて体内で合成できます。

 このたんぱく質合成能力が健康を左右する大きな要素なのですが、現代科学は、これまで一つ一つの病気や加齢に伴う変化に対応法や予防法があるかのように教えてきました。

 例えば、骨粗鬆症 にはカルシウムを、貧血には鉄を摂り、高脂血症には脂質の種類を考えましょうといった指導がそれです。確かに骨粗鬆症を予防するにはカルシウムを摂ることが必要ですが、カルシウムを摂っただけで骨粗鬆症が予防できるわけではありません。骨はカルシウムだけからできているのではなく、たんぱく質が鉄筋の役割を果たしているのです。一番重要なたんぱく質を考えずに、カルシウムやビタミンDを服用しても意味がないのです。

 また、たんぱく質は骨や筋肉を作るだけではなく、酵素やホルモン、免疫グロブリン(抗体)などもたんぱく質からなっています。

 ではこのたんぱく質の合成能力を高めるにはどのようにするかということですが、バランスの良い食事と運動をすることはもちろん大切なことです。でもそれだけでは老化や病気をしないというわけにもいきません。