2019.08 記
-味覚障害に年齢は関係ない!?
インタビュアー
前回のインタビューではすべての内容を聞くことができなかったため、改めてお時間を頂戴しました。貴重なお時間をありがとうございます。本日はどういったお話を聞かせて頂けるのでしょうか?
長谷川先生
今回は味覚障害治療の経験から味覚障害になりやすい人のパターンが分かってきましたので、そちらについてお話したいと思います。ただ、前回のように漢方の言葉をあまり出すと難しく思われてしまうので、なるべく漢方の言葉を使わずにお話させて頂きたいと思います。
インタビュアー
ありがとうございます。それでは早速ですが味覚障害になりやすい人のパターンとはどういった特徴があるのでしょうか?
長谷川先生
よく、ご相談を受けている中で味覚障害が加齢のせいと思われている方がいらっしゃるのですが、年齢は関係ないと思います。その証拠に過去の治療経験の中で一番年齢の低い方は小学4年生(10歳)でした。中学生や高校生の親御さんからもご相談を受けることも多々あります。その若いご相談者の方々はみな、親と同じ食事をしクラスメートと一緒の給食を食べているんです。決して栄養不足の食生活ではありませんし、何かしらの病気で薬を服用しているような年齢でもないんです。。
また、更年期障害と診断され、更年期障害の薬やうつ病の薬を飲まれている方も多いです。しかし、ご相談される方々の年齢は、先程お話ししたように、低年齢から90歳代の方まで幅広く、特にこの年齢という特徴がないのが実情なんです。
-味覚障害の主な原因はストレス
インタビュアー
それではどういった方が味覚障害になりやすいのでしょうか?
長谷川先生
そうですね、しいて言えば上司と部下に板挟みになっているような世代、仕事に希望を持てなくなった年齢、親の介護をしなければならない世代など、そういったストレス社会に生きている方々の方が多いようです。まとめると心にゆとりがもてない環境にある世代です。
または、生活環境でのストレス、仕事上の人間関係や、身内の不幸。親の認知、それも攻撃性の認知で地獄の日々の時、味覚障害になったと言われた方もいました。
-味覚障害が発症した具体例
インタビュアー
そうなんですね。。それでは年齢というよりも環境によっていろいろな人が味覚障害になるのもわかるような気がします。具体的にはどういった事例があるのでしょうか?
長谷川先生
不動産会社から空き地にアパートの建設を持ちかけられ、集客付きの条件で建てたのに、駅周辺に新しいアパートを建てられ、担当者へ連絡もつながらなくなり、苦境に立たされているという環境で罹患した方もいました。
不安が隠せない様子だった男性に「何か不安な事があるのですか?」とお尋ねしたら、「歳をとる事に不安だ」と言われた方もいました。
50歳中半の女性でしたが「30代の時に一度味覚障害になった事があります、しかしその頃は子育てに夢中で何も苦痛と感じませんでした。しかし子育てが終わった今、また味覚障害になったんですが、自分の事が気になり味覚障害がとっても苦しいんです。」と…。
「私は食事をするお金がなくて栄養不良なんです。」とか「いつも忙しくてファーストフードしか食べていません。」なんて方は皆無です。どちらかというとグルメの方の方が多く「家庭の料理は全てこだわって手作りで、出来合いのものは買いません。」と言われる主婦の方。それで亜鉛やビタミン不足なら「ご家族の方も、味覚障害ですか?」と聞きたくなったことがあります。
フランス料理や中華料理のコックさんなどもいました。「1~2人前だと経験で作れますが、3人前以上だと味を見ないと作れないんです。」と訴えられます。料理人の味覚障害は本当に死活問題なんです。
中には専門の内科医や歯科医の先生からも治療を頼まれてこともありました。ようするに私が経験したように、亜鉛やビタミンの治療では奏効してないんだと思います。
ご相談者様から良く言われます「治ったという記事はおたくのホームページでしか見あたりません」と…
-先生ご自身の味覚障害について
インタビュアー
本当に色々な方が味覚障害でお悩みになられているのですね。。環境でのストレスが原因だと誰にでも可能性はありそうですね。先生自身も以前のインタビューで過去になられたとおっしゃていましたが。。
長谷川先生
そうなんです。それでこれらの経験を経て「自分自身がなったのは何故なのか?」ともう一度振り返ってみました。私もストレスに弱いとってもナーバスな人間です。つまらない事が頭に残るタイプです。それに引き替え、私の家内は真逆で、うらやましいぐらいにポジティブな性格ですが…(^^ゞ。
我が家には息子が3人います。既に3人とも成人していているので大人ですが、三男が重度障害者なんです。双子で生まれたのですが、双胎間輸血症候群と言ってお互いの血管が共有したため、多血の方が死産、虚血の方が仮死状態で生き残りました。赤ん坊の頃はそれほどわからなかった障害が、成長と共に顕著に現れてきた時期でした。誤嚥・不眠・過緊張・排痰ケアまで始まり、手伝ってくれていた義母などは円形脱毛症になっていました。
私もまだ若く、仕事に夢中だった頃ですが、さすがにその環境を毎日見ては不安を隠せませんでした。きっとそれも味覚障害の誘因だったんだと思います。
よく、検査結果が「血中亜鉛濃度が基準値以下で…」とご相談を受けます。亜鉛のキレート作用がある薬剤を服用していないにもかかわらず、亜鉛が減るのは通常では起こらないと思います。亜鉛は食パンを食べても入っている微量ミネラルです。それが味覚障害になる誘因があると栄養の吸収が悪くなるんです。食べても太れないと言う食の細い方もいるじゃないですか。ここでどうしても漢方の言葉が出てくるのですがそれが「脾気虚」なんです。
風邪をひいて味覚障害になった場合、風邪をひいたから亜鉛が少なくなったわけじゃ無く、味覚障害が風邪によって強く現れたということなんです。
-味覚障害になりやすい性格
インタビュアー
血中亜鉛濃度が直接の原因ではないということですね。それではどういった性格の方が味覚障害になりやすいのでしょうか?
長谷川先生
この病気は楽天家の方がなる病気ではないと思うんです。と言うのは、ご相談者の方々のほとんどが
・最後までやり遂げないと気が済まないタイプ
・客観的に見たら些細な事でも気になってしまうタイプ
・寝床まで不安を持ち込んでしまうタイプ。
など、俗に言うまじめ気質です。
日本人に多いA型気質みたいな方がほとんどなんです。なので沖縄の方の相談はほとんどありません。沖縄の方が健康で長生きなのは、食事内容より「なんくるないさ~」の精神が秘訣じゃないのかなと思ってしまいます。
一昔前までは「まじめ」って、人間としてとっても大切な条件だったようですが、ストレスを抱えやすい点では病気のリスクは高くなります。近年の病気の原因は、多食による生活習慣病か、ストレスによる免疫の病気ばかりです。
-味覚障害の治療について
インタビュアー
ご相談された方々はどういった治療をおこなうのでしょうか?
長谷川先生
治療にあたってですが、味覚障害になると何でも良いと聞いた物は取り入れた方が良いと考えられる方が多いですが、私は逆だと思っています。多種類のサプリメントや薬を服用すると、その分長くいろいろ物を消化しなくてはならなくなり、胃腸の元気が奪われるんだと思うんです。なので必要不可欠な物以外はお休みいただくようアドバイスしております。
例えば「口がベタベタ」という症状があります。これは暴飲暴食の方に多いのです。暴飲暴食というと、沢山飲み食いするという感覚に聞こえますが、そうではなく、一日に3食以上の食事をしていたり、間食が多かったり、寝る前までだらだら食べていたりとか、消化器官を休める暇が無いんですね。消化器官は一日中消化酵素を出していなければならないんです。人間に例えると朝から深夜まで残業させられているようなものです。そうなればそんなブラックな環境はストライキでも起こしたくなりませんか? なので胃腸がストライキを起こした状態が「食べのを入れるな=味覚障害」なんです。
-過去に味覚障害が改善したご相談者の方々
インタビュアー
胃腸がストライキを起こした状態が「食べのを入れるな=味覚障害」というのはとてもわかりやすいですし、自分になったと思うととても怖いですね。。過去に相談に来られた方はどのような方がいたのでしょうか?
長谷川先生
以前、群馬県からこんなご相談がありました。味覚障害で数ヶ月病院に通ってもどうにもならないとの内容でした。お話を伺うと、スノボにはまり毎晩ナイターに行っていたとのことでした。ここまでは有意義な時間のように思えますね。ここからが検査では見えない所なんですが、スキー場の食堂に激辛ラーメンのメニューが有り、それがとても気に入って必ず食べていたそうです。お話しの中、どうやら味覚障害の原因はそれではないかと感じました。でも病院ではそんな事話さないですよね。なので亜鉛とビタミンを数ヶ月服用してもどうにもならないわけです。1ヶ月分の漢方薬をお届けしました。その後の様子は連絡も無かったので伺っていませんでした。そしたら、ちょうど私の誕生日に群馬のお土産を持ってご来店されたのです。「あれですっかり良くなりました、ありがとうございました」って、おそらく一緒にナイターをしてたと思われる彼氏も一緒で、初対面でのご来店したがとってもきれいな方でした。(個人の感想です)
インタビュアー
激辛ラーメンが原因かもしれないというのは本当に怖いですね。自分もよく辛いラーメンを食べるので本当に誰にでも起こりえるものだというのがよくわかります。特に治療が早かった例などはありますか?
長谷川先生
数年前の7月の土曜日に、上尾市にお住まいの、60歳代のご夫婦がご来店されました。奥様が味覚障害で、罹患して1週間とのお話しでした。御主人は当店に来る事より、どこかの病院に連れて行きたいような素振りでした。その1時間後に今度は足立区から40歳代の男性がご来店されました。こちらも罹患して1週間と言われました。お二方ともお話を伺い、漢方薬をお持ち頂きました。すると、翌週の火曜日、お二方から電話があったのです。「主人は信じてくれませんがウソのように治りました」とご婦人から、「見事に治りました、また何かあったらご相談させてください」と男性から。
ここからがおもしろいところなのですが、そのご婦人が1年後の夏に再度電話をかけてきたのです。「また味覚障害になりました、今度は薬を送って下さい」と、そしたら翌日かかってきた電話が「一服で治りました」って言われるのです。神経の病気や味蕾細胞の故障なら一服で治るなんてあり得ないです。こんな事例を沢山経験していると、味覚障害は組織の病気では無いと確信するようになりました。何かの環境で発症しても罹患の理由がわかり、不安がなくなれば治るものなんだと。
ここから更に続きがあるんですが、そのご婦人がまた1年後の夏に電話をかけてこられたのです。「また、味覚障害になりました、漢方薬を送って下さい。でもあの薬を飲めば治るから心配はしてません。」と、おそらく夏の暑さが体に負担になっているのでしょうか、おもしろい事例です。
-様々な味覚障害の発症例
インタビュアー
それはすごいですね!そういったお話を聞くと食べ物の質が原因というわけではないというのがよくわかりますね。
長谷川先生
そうなんです。他にも
・猛暑の夏、やかんに氷詰めした麦茶をがぶ飲みしてから味覚障害になった男性。
・ヘビースモーカーだったが、健康のため禁煙をしたら味覚障害になった男性。
・かわいがっていた娘が二人とも嫁いでしまい、悲しくて発症した女性。
・仕事場に姑以上の上司がいると言われた女性。
・更年期障害と診断され、婦人薬の漢方を処方され全く改善しないと訴える男性。
このように食べ物の質ということではなく、胃腸がウィークポイントで、そこに悲鳴が現れやすい方が味覚障害に多いのです。どこにも亜鉛不足やビタミン不足は見あたらないのです。
-背景にある良くない環境が発症の大きな原因
インタビュアー
それぞれのご相談者が本当にいろいろなケースで味覚障害になり悩んでいるのですね。。
長谷川先生
これらが生の声を聞いた、味覚障害に罹患した方々の現状です。ほとんどの方が背景に良くない環境があり、そこから発症する「胃腸の悲鳴=味覚障害」なんです。
楽しい環境、充実した生活をされている方は、味覚障害なんて無縁なんです。「箸が転がっても笑う年頃」なんて言葉がありますが、そんなときは幸せ感に満ちている証拠です。高級料理とか、ご馳走でなくても、どんな物を食べてもおいしいのです。
中学生の頃を思い出して下さい。部活などで帰りが遅くなったとき、その頃は成長期でお腹がペコペコですよね。学校給食で余った食パン、帰り道に買い食いした菓子、家に残っていた昨日のおかず、そんな物がものすごく奥の奥の旨みまでを感じた事がありませんか?胃腸が消化をしたいと思ってるときはどんな物でもおいしいのです。
味覚障害って環境や性格から幸せホルモンが出なくなり、不安ホルモンが多くなった状態だと見えるんです。決して脳の鬱ではなく、不安ホルモンが胃腸系に出やすい方が消化を拒否している状態だと思うんです。
事例・症例をあげるとまだまだいくらでもお話しができるのですが、こんな内容でご理解頂けたでしょうか。
インタビュアー
たくさんの事例と症例をありがとうございました。
■インタビュアーより一言 味覚障害になり病院に通院してもなかなか改善しない方が多数いる中で、漢方での治療により多くの人を改善しているのがよくわかりました。誰もがいつなってもおかしくない症状のようで、聞いていても少し自分は大丈夫かなという思いがありました。それぞれが抱えている背景にある良くない環境と向き合いながら治療に取り組むことで改善されるのはとても素晴らしいことだと思います。もし自分が同じような症状に悩んだときは先生に一度ご相談させて頂きたいと思いました。 (インタビュアー:梅原淳一) |