味覚器としての舌
食物の味を識別する感覚を味覚といいますが、味覚器は、嗅覚器と同じく独立した器官はなく、消化器としての口腔、特に舌にあります。
味覚はうまい食物を見つけ、有害物を識別するだけでなく、食欲を高めて消化液の分池を促すなどの働きも受け持っています。
味覚の受容器、味細胞
味覚の受容器は味蕾(ミライ)で、味蕾は花のつぼみ状の器官で、中に20~30個の味細胞があります。舌の表面にある舌乳頭の有郭乳頭や葉状乳頭、茸状乳頭の側壁に味蕾がありますが、乳頭のうちで最も多い糸状乳頭にはみられません。
味蕾は、乳幼児では多く、乳頭表面の他に口蓋や咽頭・喉頭蓋などにもあります。
成人では約1万個ありますが、年とともに減少し40歳ごろから著しく退化し感受性も低下します。
なぜ、味が分かるのか?
1.味蕾の上端の小さな味孔から、味細胞の先から出た味毛が口腔内に出ています。水や唾液に溶けた物質(分子)が味毛を刺激し、味細胞に電位変動が起こります(水に溶けるもの、ただし、溶けなくてもイオンとなるものならよい)。
2.味細胞に来ている味覚神経線維に活動電位が発生し、脳幹の味覚神経核に伝えられます(1個の味細胞は、平均2~3本の味覚神経線維で支配されています)。
3.味覚神経核からの興奮は、脳幹から視床を経て大脳半球の味覚中枢に達し味覚を知覚します。ここは、舌からの体性感覚を感受する所に非常に近く、殆ど重なり合っています。
4つの味覚
味覚は、酸・塩(鹹カン)・甘・苦の4種の基本味に区別されます。4種の味覚に対する感受性は、舌の部位によって異なることが知られています。
甘味は舌の先で、苦味は舌の根元で、酸味は外側緑で、塩味は舌尖(ゼツセン)と周縁で最も感じます。
ふつう私たちが感じている食物の味は、これらの4つの味覚と、他に温度や舌ざわりなどの感覚を総合したものです。
味覚は、嗅覚と同様に個人差が大きく、年齢、性、精神的・肉体的条件、気候風土の影響も受けます。
特に温度による影響は著しいものがあります。