1.サポニン Saponin とは
サポニン:天然の洗剤(界面活性剤)
サポ sapo:石鹸(シャボン)-持続性の泡立ち
例:サイカチの果実、ムクロジの果皮(延命皮)、キラヤ(南米)の樹皮、椿の種、(フィルム材料)など
薬用植物の有効成分
2.サポニンのサポゲニンによる分類
サポニン=サポゲニン+糖類
◆トリペルテンサポニン
◎オレアナン型サポニン:最もポピュラー
桔梗、マロニエ、シクラメンなど-鎮咳、去痰、抗炎症
甘草-甘味剤、肝臓病治療、抗アレルギー、抗炎症
大豆-抗酸化、タラ-糖尿病治療、柴胡-漢方
サイカチ、キラヤ、ムクロジ、椿など-洗剤、界面活性剤
◎ダマラン型サポニン:(薬用)人参属に特徴的、抗溶血、 特殊な薬理作用
薬用人参、田七人参、アメリカニンジンなど
プロトパキサジオール系、プロトパナキサトリオール系
◎その他
◆ステロイドサポニン
3.田七人参のサポニン32種類
田七人参のプロトパキサジオール系のダマラン型サポニン
主サポニン
1.ジンセノシド-Rb1、 2.ジンセノシド-Rd、
微量サポニン
3.ジンセノシド-Ra3、 4.ジンセノシド-Rb2、
5.ノトジンセノシド-Rb3、 6.ノトジンセノシド-Fa、
7.ノトジンセノシド-A、 8.ノトジンセノシド-B、
9.ノトジンセノシド-C、 10.ノトジンセノシド-D、
11.ノトジンセノシド-E、 12.ノトジンセノシド-G、
13.ノトジンセノシド-I、 14.ノトジンセノシド-K、
15.ノトジンセノシド-L、 16.ノトジンセノシド-R4、
17.ジペノシド-XV?U、 18.キンクエノシド-R1、
田七人参のプロトパキサトリオール系のダマラン型サポニン
主サポニン
19.ジンセノシド-Re、 20.ジンセノシド-Rg1、
15.ノトジンセノシド-R1、
微量サポニン
22.ジンセノシド-F1、 23.ジンセノシド-Rg2、
24.ノトジンセノシド-Rh1、 25.20_グルコジンセノシド-Rf、
26.ノトジンセノシド-R2、 27.ノトジンセノシド-R3、
28.ノトジンセノシド-R6、 29.ノトジンセノシド-H、
30.ノトジンセノシド-J、 31.ノトジンセノシド-M、
32.ノトジンセノシド-N、
ジンセノシド=薬用人参から見つかったサポニン名
ノトジンセノシド=田七人参から見つかったサポニン名
4.薬用人参と田七人参の主なサポニンの含有量の比較
【ダマラン型サポニン】 | 薬用人参 | 田七人参 |
プロトパキサジオール系サポニン | ||
ジンセノシド-Rb1 | 0.96% | 3.4% |
ジンセノシド-Rb2 | 0.67% | 0.03% |
ジンセノシド-Rc | 0.54% | - |
ジンセノシド-Rd | 0.31% | 0.84% |
合 計 | 2.48% | 4.27% |
プロトパキサトリオール系サポニン | ||
ジンセノシド-Re | 0.35% | 0.21% |
ジンセノシド-Rf | 0.11% | - |
ジンセノシド-Rg1 | 0.45% | 1.6% |
ノトジンセノシド-R1 | 微量 | 0.16% |
合 計 | 0.93% | 1.97% |
【オレアナン型サポニン】 | ||
オレアノール散のサポニン | 0.5% |
田七は頗る人参に類似するが、
人参:気を補う
田七:血を補う
(本草網目拾遺)
5.田七総サポニンの薬理作用(動物実験)
鄭光植、楊崇仁編著:三七、生物学及其応用 科学出版社1994
造血作用
薬物、放射線による白血球数の減少の回復
貪食細胞の貪食率の増加、血中リンパ細胞の増加
培養骨髄細胞の成長促進、活性化
活血作用
血小板凝集抑制作用-ジンセノシド-Rg1(G-Rg1)
失血性貧血の回復作用
溶血作用(赤血球膜の破壊)は無い、抗溶血作用
止血作用:デンシチン(三七素、アミノ酸系化合物)
6.血管系に対する作用
冠状動脈、脳血管拡張作用(G-Rg1,-Re)、心筋収縮の抑制作用、
急性心筋虚血状態における血流量の増加と心筋細胞の保護作用
抗老化作用
糖代謝異常の正常化、ブドウ糖付加により起こる高血糖の抑制
白内枠予防、組織の老化抑制
活性酸素の消去、過酸化脂質の生成阻害による動脈硬化の抑制
血清中のHDL量の増加
消化器系に対する作用 抗胃潰瘍作用
肝臓機能に対する作用 GOTの低下
田七フラボノイドの活性酸素消去作用
7.神経系統への作用
鎮痛作用 強力、即効性、持続性(2時間):G-Rb1
鎮静作用 自発性運動量の減少、睡眠時間の延長:G-Rb1
学習力、記憶力の増強効果
抗炎症作用
毛細血管の透過性増加を抑制する件用、炎症反応の抑制
アレルギー性関節浮腫の抑制
免疫機能、生体防御機能に対する作用
免疫機能の異常亢進、低下を正常化
マクロファージの貪食能の増強、溶菌酵素の活性を増強
生体防御機構活性化多糖体、サンチナン-A
8.田七サポニンの発がん抑制作用
(京都薬科大学 木島ら、京都府立医科大学 徳田、西野)
マウスの皮膚がん、肺がん、肝臓がん抑制ージンセノシド-Rg1
抗腫瘍性ポリアセチレン系化合物:バナキシトリオールなど
急性毒性、亜急性毒性 問題なし(中国、日本)
田七の臨床応用(中国)
狭心症の痛みの緩和、高コレステロール症、高脂血症、
急性虚血性脳血管障害と、その後遺症の緩和、更年期障害
出血治療:消化管出血、眼出血、脳内出血、子宮出血、喀血、血尿、外傷
慢性肝炎、怪我の鎮痛と炎症治療、輸卵管閉塞、滋養強壮
『資料提供』
広島大学医学部名誉教授
中国科学院昆明植物研究所名誉教授
薬学博士:田中治先生